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アートに生きる - TORIHADA取締役のブログ

現場を知らない、決断できない、責任を取らないリーダーになっちゃだめ

日本型リーダーはなぜ失敗するのか

昨年僕は、知覧特攻平和会館や、大和ミュージアムなど、戦争に関する施設に行き、戦争に関する書籍を読み漁った。

今年も続けている中で、戦略やリーダーシップについて書かれた『日本型リーダーはなぜ失敗するのか半藤一利著が面白かった。

その中のエピソードで東郷平八郎のエピソードを紹介したい。

東郷平八郎は、日露戦争勝利の立役者で戦争の神様のように奉られている。
その理由は一般的に、どこに来るかわからない敵艦隊が来る場所を「対馬でごわす」と神通力で的中させ、見事勝利に導いたからだと言われている。

しかし、『極秘明治三十七八年海戦記』という本によると、実はそうではなかったようだ。
この本は三冊しか発行されず、極秘の本で戦後40年経ち資料館に奉納されるが、それまでは宮中に置かれており、日本海海戦を描いた『坂の上の雲』の著者司馬遼太郎さんですら知らなかったもの。

実態は神通力などではなく、とある二人の軍人により意見され、東郷さんが悩んだ末に決めたとのことだった。
(当時の日本は東郷を神様のように扱うことで、軍事国家としての美学を国民に植え付けたかった。)

日本海海戦の経緯

・日本軍はロシアの最強艦隊であるバルチック艦隊の動きを注視していた

バルチック艦隊はまず日本を抜け、ウラジオストクで整備をして、再び日本に戻り日本海軍と相まみえるつもりだと情報を得た

バルチック艦隊が日本を抜ける方法は、対馬海峡津軽海峡宗谷海峡の3つ。

・日本艦隊はバルチック艦隊が、ウラジオストクに入る前に戦いをしかけて撃破したい。

・そのため、どこの海峡を通るか予測する必要があった。

・事前情報から、5月14日にバルチック艦隊ベトナムを出たのは分かっていた。

・仮に10ノットで航行すると、対馬海峡に21日から23日には到着するはず。

・それを踏まえ日本軍は、東シナ海一面に警戒網を張っていた。

・しかし、23日になっても来ない。

・司令部は焦り、東郷含む参謀は、バルチック艦隊津軽海峡に向かったと考え、25日になったら一斉に「北海道へ向かえ」と司令を出した。(25日より以前の事前開封が禁じられた命令書を各軍艦に手配した)

・しかし、25日の軍議会議で藤井と島村という軍人(だけ)がそれに異を唱えた。

・藤井「10ノットのスピードが出る艦隊ではあるが、そこまでのスピードで出すことは考えにくい。せいぜい7ノットで来るはずだ。また、途中で日本軍を混乱するために遅らせる可能性もある。加えて、燃料や食料を踏まえると、27日前後に対馬にくる。」

・遅れて入ってきた島村「かのバルチック艦隊が、たかが日本軍を恐れて迂回するとは考えにくく、最短距離の対馬に来るはずだ」

・大人数の中で唯一藤井と島村だけが反対意見を出したが、東郷平八郎が二人を個別に部屋に呼び、議論し、二人の意見を取り入れ、命令書の開封を24時間遅らせた。

・結果、26日にバルチック艦隊対馬海峡に到着。日本軍が見事撃破する。

※日本において、作戦が参謀に決めさせる仕組みになった理由は、トップが責任の重さゆえ優柔不断にならないよう・参謀に責任を押し付けられるようにしたためだと本書では書かれており、責任を取らないリーダー誕生のきっかけだとされている。

このエピソードから僕が学んだこと

  1. 戦争・戦いにおいては、ファクトの情報(敵の動き)を掴みきることは難しく、予想も大いに必要になる
  2. 正しい予想・判断には正確な現場感が必要
  3. 多数決で正しいことが決まるわけではない

ということ。

多数決を取っていたら、今日本はロシアの敗戦国になり、僕たちはロシア人を名乗っていたのかもしれない。

更にこの後本書では、別の軍人について語られる。

海の東郷に対して、陸の神様である大山巌のエピソードだ。

それは、戦争も苛烈な時に大山が参謀に対して

「何やら騒がしいですが、なにか問題ですか?」と言ったというエピソードである。

つまり、大山については「動かざること山のごとし」で部下に任せるリーダー像が国民に伝えられた。

しかし実態は、細かく現場状況を把握し、細かく決断・指示したマイクロマネジメントだったとのこと。

それが、伝えるための簡略化・軍人の神格化のために、捻じ曲げられた。

それにより、日本において、聞こえよく言えば「任せる」リーダーシップ、悪く言えば「現場を知らない・決断しない・責任を取らない」リーダーシップを加速させてしまったと主張する。

言い換えれば、お神輿に担がれているだけのリーダーでいいという日本式リーダーシップ論の誕生。

これを踏まえて、TORIHADAにおいても、「現場を知らない、決断できない、責任を取らないリーダーになっちゃだめ」と言いたい。

この本を読んで過ごしていると、日々の会議の

「私はこう思ったけど、私以外みんながこう言ったんです」

「僕は入ったばかりで知らないから黙ってました」

みたいな発言や態度が非常に気になった。

僕自身も無責任な発言をしてしまったこともあった。

最後に、半道さんの主張をまとめる。

リーダーたる者、誰よりも現場を知りマーケットや敵の心情や足取りまで細かく予想できねばならない。

リーダーたる者、全員に反対されても正しいと思う道へ導かねばならない。決断しなければならない。

リーダーたる者、自分の判断によって敗戦し、仲間を死なせることを覚悟し、責任を負わなければならない。他責にしてはならない。

先祖達のシビアな戦いを鑑みると、なんともみっともないリーダーになってないだろうか。

是非自問自答したいところ。